フィリピンは、世界的に見ても大きな、労働力輸出国です。
ここでは、フィリピンの女性に着目して、フィリピンの出稼ぎの背景や、現在と過去を比較しながら、状況をまとめてみました。
目次
フィリピン人にとっての出稼ぎ
フィリピン人の出稼ぎの大きな目的は、家族を養うためです。
この背景には、フィリピン人の、家族を大切にするという国民性にあります。この国民性は、長い歴史の中で普遍的に受けつがれて、さらに強く根付いたのが、“年配の方に敬意を払う“ということです。これにより、三世帯が一つ屋根の下で暮らす、日本の昭和時代を思いださせるような光景が、いまでも見られます。
これは、フィリピンの企業にも影響し、フィリピンのトップ企業のほとんどは家族経営です。この中には、あの有名な、フィリピンで大人気のファストフード“ジョリビー“も含まれます。
ジョリビーは、トニー・タンと彼の家族が、アイスクリームパーラーとして商売を始めたことが、原点にあります。
このように、フィリピンでは、家族みんなで助け合っていくことが当たり前のことだと考えられているのです。
フィリピンの定年退職は40歳~50歳で、基本的に、退職後の親の収入源は子どもからの仕送りになります。そして、長男・長女が下の妹・弟の学費も払うという概念もあり、長子は特に負担が大きいです。
フィリピン国内の仕事の数は少なく、就業が困難です。また、仕事につけたとしても得られる給料はわずか・・・
よって、出稼ぎに行った方が稼げるうえに、多くの家族を養うことができます。出稼ぎにいった人は、家族にとって“ヒーロー”のような存在なのです。
フィリピンでは、国民の10人に1人が海外へ移住し、出稼ぎとして働いています。国内では、政府が出稼ぎを推奨しているほど、働き手の数に比べて、仕事の求人の数は圧倒的に足りていません。
特に15歳から24歳までの若者の失業率は高く、無職の人がいまだに多くいます。
だから、フィリピンでは、“はやく海外で働きたい”という願望を強く持っている人が多いのです。
出稼ぎが及ぼす経済への影響
出稼ぎ労働者から、フィリピンの家族への送金額は、フィリピンの経済を大きく支えていています。
フィリピンでは、国民の10人に1人が海外へ移住し、出稼ぎとして働いています。
彼らは、OFW(Oversea Filipino Workers)と呼ばれており、フィリピン経済の10%を支えていると言われています。国民一人当たりのGDPが高いことには、このOFWの方々の送金が影響していることが考えられます。
エンターテイナーとしてのフィリピン人女性
フィリピンは出稼ぎが盛んな国で、特に、女性が働き頭となり、アメリカや中東など、さまざまな国へ出かけています。
そんなフィリピン人女性が、日本で多くみられるようになったのは、1980年代後半です。この時代のフィリピン人女性の多くは、フィリピンパブやクラブで働いていました。
当時の彼女たちは、フィリピンのプロモーションで1年間の猛レッスンを経て、興行ビザと呼ばれる、ダンスや歌などパフォーマンスをする人に与えられる資格で来日していました。
しかし、2004年、米国務省は「世界の人身取引に関する年次報告書」で、興行ビザが人身取引の原因になっていると指摘したことによって、2005年に興行ビザ発給の規定が変更されました。それによって、フィリピンの若い女性の来日が減り、フィリピンパブ業界も衰退していきました。
現在のフィリピン女性の在留資格
興行ビザの規定が厳しくなったあと、フィリピンパブで働いていた女性の多くは、日本人男性と結婚をして、就労制限のない「日本人の配偶者等」の在留資格を取得しました。
ここで、起きた問題は、「偽装結婚」です。なかには、好きな人と結ばれて幸せに暮らしいる人もいますが、男女関係への介入は難しいため、偽装結婚の取り締まりは難航していました。
現在の日本は、少子高齢化の影響で、働く人材が不足しています。そこで、外国人労働者が重宝され、2019年4月から「特定技能」の在留資格をもつ外国人の受け入れが積極的に行われています。
このビザを取得するためには、技能評価試験と日本語能力に関する試験に合格する必要があります。よって、取得までの労力と時間がかかります。
その他の方法としては、「短期滞在」のビザで来日した後、「長期滞在」ビザへの変更や、日本に住んでいる兄弟や親せきに呼んでもらい、「家族滞在」としてのビザでの来日を果たしている人もいました。
しかし、注意しなければならないのは、在留資格に就労が許されていない場合です。日本で働きたい場合は、それぞれ単独の四角で就労ビザや結婚ビザなど身分に関するビザを取得する必要があります。
現在のフィリピン人出稼ぎ労働者について
フィリピンパブ業界が衰退し、日本人と結婚したフィリピン人の多くは現在、パートとして働いているひとが多いです。
また、フィリピン人の働く職種・業種として多いのは、男性は、製造業や建築業で、女性は、介護をはじめとしたサービス業です。
いまの日本において、さまざまな業種で人材が不足している状況で、外国人労働者の需要が高まっています。
フィリピン人の明るい性格とホスピタリティーは、日本に不足しているサービス産業への人材にも重宝されるでしょう。また、フィリピンでは、タガログ語と英語を織り交ぜながら話すことを、タガリッシュと呼ぶぐらい、英語も公用語として広がっています。そのため、フィリピン人の多くは高い英語力が期待できます。
まとめ
フィリピン人が出稼ぎに行く理由には、家族を思う気持ちが大きく影響していることが分かりました。
冒頭で、出稼ぎがフィリピン経済を支えているとお話をしましたが、課題もあります。国内では、優秀な人材の流出、一方、国外では、日本語取得の問題があります。日本以外の国では、給与の未払いや、雇い主からの虐待でフィリピン人女性の自殺、殺害されるケースも報告されています。
多くのフィリピン人の出稼ぎ労働者は、職場環境がどんなに過酷だったとしても、家族を養うために、出稼ぎを簡単にやめることはありません。
今後、すべての出稼ぎ労働者が、公平で、楽しい職場環境のなかで、働けることを願っています。
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